研究者向けクリエイティブ・コモンズ・ライセンス入門

オープンアクセスで研究成果を公開するうえで、公開内容の利用や著作権に関してまだ不透明な点があると感じていらっしゃる方も多いことでしょう。そこで、この記事ではクリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)に基づく様々なライセンスについて詳しくご説明します。

最終更新日:2015年8月17日

interconnected people illustrating the open sharing of Creative Commons licenses

昨今ではますます多くの学術誌で、従来の著作権からよりオープンなライセンスへの移行が進んでいます。広く利用されている一連のライセンスとしては、著作物へのアクセスと再利用の促進を目指す非営利団体クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)によるものが挙げられるでしょう。もともとハーバード大学法学教授Lawrence Lessig氏によって開発されたクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、作品利用の範囲について個々の利用許可申請によらず著作者が明確に意思表示する手段として、通常の著作権に代わる手段となりつつあるのです。

さて、基本的にはわかりやすいクリエイティブ・コモンズの仕組みですが、個々のライセンスについて扱おうとすると様々な疑問がわくものです。実際、私がこれらのライセンスについて耳にしたのは大学院生をしていた2008年のことですが、いまだに新たなニュアンスに気づかされることがあるほどです。では、これらのライセンスの意味とメリット・デメリット、関連する問題を見ていきましょう。

CC-BY

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの中でも最も制約が緩い「クリエイティブ・コモンズ 表示CC-BY)」は、オリジナル著作者の表示を条件として作品の頒布・編集・改変・他作品への転用を認めるというものです。このライセンスでは作品のダウンロードや複製だけでなく、テキストマイニングをはじめとする自動処理も許可されています。

CC BY SA

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承CC-BY-SA)」はCC-BYをもとにしたライセンスであり、オリジナル著作者の表示に加え、その作品に基づいて制作された新たな作品についても原作と同じ条件が課されるというものです。

CC BY ND

クリエイティブ・コモンズ 表示-改変禁止CC-BY-ND)」では、オリジナル著作者の適切な表示に加え、作品全体を改変なしで利用することが求められます。

CC BY NC

クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利CC-BY-NC)」は非営利目的での利用に限り、著作者を適切に表示した上で原作の編集や改変が許可されるというものです。その作品に基づいて制作された新たな作品についてライセンスの制限はありません。

CC BY NC SA

クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-継承CC-BY-NC-SA)」は、非営利目的という制限と派生作品に対する同条件の適用を組み合わせたもので、もちろん著作者の表示も求められます。

CC BY NC ND

最期に「クリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-改変禁止CC-BY-NC-ND)」ですが、これは著作者の表示を行った上で、非営利かつ改変なしという条件でオリジナル作品のダウンロードとシェアを認めるものであり、クリエイティブ・コモンズの中で最も制約が厳しいライセンスです。

public domain

作品を完全なパブリックドメインにしたいという方はCC0マークを利用することで、その意思を表示することができます。この場合、著作権はすべて放棄されたことになり画像の利用も法律の範囲内で自由です。

では、学術論文の公開にもっとも適したライセンスはどれなのでしょう?この質問にはっきりした答えをだすのは、利用できる選択肢の幅が広いこともあって簡単ではなさそうです。とはいえ、オープンアクセスでの研究発表について言えば、一番ポピュラーなライセンスは最も制約が緩いCC-BYであり、利用者数は年々増加しています(ただし、このデータは完全とは程遠いものです)。一方、その他の選択肢も一見すると学術論文の公開に適しているように思えるかもしれませんが、実は様々な課題が隠されています。たとえば、非営利目的の利用とは具体的にどういうことなのかについて、曖昧さが残されているといった問題です(例:NPOは営利企業に含まれるのか?)。

また、CC-BY-NCライセンスの場合、ある出典の内容をその他の刊行物や教科書で引用したり教育の場で利用したりする行為まで禁止してしまうことになりかねません。けれども、学術研究の場において派生研究はとても大切です。実際、論文を読む中で誰もが「~を参照」という文言を何度も目にしているはずです。したがって、このような利用までむやみに制限してしまうのは賢明とは言い難いわけです。

一方、Nature Portfolioのオープンアクセス・メガジャーナル『Scientific Reports』に論文投稿している執筆者たちに傾向を尋ねたところ、多くの場合より制約の強いライセンスを利用しているという答えが返ってきたという実態もあります。しかし、オープンアクセスを擁護する人々の多くはこれについて、研究成果の利用法を制限する強い意思というよりも、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに関する情報不足が原因だと考えています。そもそも、論文の一義的な目標はより多く引用されることであり、そのためには読者に幅広い利用法を提示するのが最善のはずです。もちろんRichard Van Noorden氏のコメントやSanford Thatcher氏による対照的な主張でも言及されているように、一番大切なのはライセンスの詳細にこだわることではなく、誰にでも無料で読めるようにすることなのかもしれません。ただし、その選択によっては学術誌側が準オープンアクセスの条件を課してしまうことがあるのです。研究成果にアクセスできるようにするのは良いことですが、自由な利用やデータマイニングを含めた本当の意味でオープンアクセスこそが、膨大なデータが日々生み出される現代では求められているのではないでしょうか。

オープンアクセスについて、ご不明な点やご意見をお持ちの方は、お気軽に弊社までご連絡ください

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