これまでに盗用の様々な形態について定義し、学術誌からの論文掲載の撤回などのような知的窃盗がもたらす結果についてご説明しました。事実、PNASは、削除された学術雑誌論文の10%は、他人の考えを盗用したために撤回されていること、14%は既に公表されている論文の複製であったことから撤回されていると報告しています。広く認知されている盗用およびあまり一般的に認知されていないタイプの盗用が、学術文献の発表において大きな問題であることは明らかです。
盗用の回避についてのこの記事とその前の盗用の定義についての記事は、ホワイトペーパーとして内容が一部変更されています。
インターネットを介して研究論文へのアクセスが高まっていること、コピーアンドペースト機能の利用しやすさ、終身地位保証を獲得して助成金を得るために高い影響力をもつ学術雑誌に頻繁に論文を発表しなければならないというプレッシャーの高まりから、盗用は増大する傾向にあります。しかしながら、学術関係者における意識が高まったことから、思考の窃盗は今まで以上に検出されています。学術文献に精通した査読者は、以前に発表された論文に似たデータや表現に気づき学術雑誌に警告することができます。ひとつの論文内で文章のスタイルや語り口が違ったり、より関連性のある資料と一緒に一見関係ないような考えがあわせてコピーされていたりすると、論文が盗用された可能性があると警告を発する場合があります。さらに、多くの学術雑誌が、CrossCheckなど盗用検知ツールを使用して、提出された論文を、発表済み論文の大規模なデータベースと比較するようになっています。
いかに盗用を回避して論文が学術雑誌に出版される可能性を高めることができるでしょうか?次の手順をお試しください。
ステップ 1
文献を参照しながら論文執筆の準備をしている際に、出典を注意深く記録しましょう。ZoteroやEndNoteなどの引用用のソフトウェアがこの段階で役立ちます。
ステップ 2
執筆中、不注意にコピーすることを避けるために、参考文献をそのまま引用しないようにしてください。内容を多様化するために複数の参考文献を使用し、多すぎるくらいに出典を明記するといいでしょう。
出典を引用する際の注意点
- 逐語的な文章を含める際、たとえ2つの語句に言及するだけであっても、これを引用符の内側に配置しなければなりません。自分の論点に必要なものだけを引用してください。引用符は、語句が言い換えにくかったり特徴的すぎる場合に特に便利です。
- 盗用の定義の投稿において概説されているように、どのような参照文献であるかにかかわらず、独自の考えや論理、または他の情報を言い換える場合、適切に言い換えたり、出典を明記することにより、自分の主張や論理と関連して、他人の考えと自分の考えとを区別します。ここでも、自分の論文に関連する情報のみに言及してください。
- 自分が以前に出版したものに言及する場合。
- 適切な許可を得て、他人の図表を複製したり適用したりする場合。
出典を引用しない場合
- 現在執筆中の論文で初めて発表する自分の研究を詳述する場合。
- 一般情報に言及する場合、一般的な参考文献で入手できる情報、または最低5つの出版物で引用されずに掲載されている情報(歴史的な出来事の日付や一般的な実験手法など)。ある概念が特定の分野で既知であったり、インターネット上で論議されているからといって、一般情報とは限られないことに注意してください。情報が一般に知られているかどうか不明な場合は、引用を加えてください。
ステップ 3
執筆後、原稿と参考文献リストを見直し、適切な引用元がすべて記載されていることを確認します。さらに、Turnitin、iThenticate、または他の検知ツールを使用して、不注意による盗用がないかどうかを確認してください。
本書が偶発的な盗用も回避するのにお役に立てれば幸いです。研究活動でのご活躍をお祈りします!