研究提案書を採択に導く効果的な書き方

プレプリントとは、執筆者本人が公共のプレプリントサーバーに投稿・公開する査読前論文のことです。本記事では、迅速なクレジットやフィードバック、検索性の向上など、プレプリントの投稿によって論文執筆者が得られるメリットについてご紹介します。

最終更新日:2022年8月25日

Hospital Researchers' binders that are full of successful grant proposals

研究予算の獲得はより一層厳しくなり、研究助成機関は厳格なガイドラインや制限を課しています。その一方で、助成金申請書の効果的な書き方について、本格的な訓練を受けている研究者はほとんどいません。研究助成申請書を効果的に書くことができれば、研究者としてのキャリアは大きく前進します。

助成金提案書の書き方は、若手研究者や英語が母国語でない研究者には特にチャレンジではありますが、それほど難しいものではありません。獲得する方法さえ知っていれば、欲しいものは手に入ります。

この記事では、申請が採択されるための研究提案書の主な構成要素について概説し、複雑な申請プロセスをナビゲートするのに役立つ情報をご紹介します。具体的な内容は次のとおりです。

  • 助成金募集の検索と特定
  • 助成金申請書の作成とレビュー
  • 申請書を提出した後に行うこと

助成金提案書とは何か?なぜそれが必要なのか?

助成金提案書または助成金申請書とは、研究プロジェクトの資金を得るために資金提供団体や研究助成機関に提出する文書(または一連の文書)です。

研究助成金の申請書は科学分野によって大きく異なりますが、一般的に共通して使えるコツがあります。

助成金提案書を効果的に書き上げることは、資金を得て研究目標を達成するための鍵となります。しかしそればかりか、助成金申請書を書くことで、次のような間接的メリットが数多く得られます。

有期契約の研究者であれば、資金を得ることで契約を延長することができる。

助成金申請の成功により、他の研究グループや研究機関で一時的な職に就くことができる。

研究助成金を獲得することで、専門家の審査委員会があなたの研究アイデアは他の研究者のものよりも優れていると評価する可能性がある。

提案書提出前の調査の実施

提案書を提出する前の段階で努力をすることで、採択される確率は大きく向上します。本当に必要なものは何かを徹底的に追求して、それをうまく手に入れる方法を確認します。事前に考えておけば必ず役に立ちます。

過酷な競争環境

助成金をめぐる競争はかつてないほど厳しくなっています。

欧州委員会のHorizon 2020プログラムをご覧ください。Horizonは、EUの最も大規模な研究とイノベーションのプログラムです。2014年から2020年にかけて、800億ユーロ(約840億米ドル)近くの資金が確保されました。

Nature誌の記事によると、EUのHorizon 2020は、最初の100件の提案募集では14%の採択率を示し、一部のカテゴリーではより低い採択率でした。

短期決戦ではなく、長期的な視点で考える

このような確率を考慮すると、プロセスを早めに開始することが重要です。提案をまとめるには、少なくとも4〜6カ月は必要でしょう。

成功率を高めるには、助成金提案書を作成し始める前に、やりたいこととやりたい理由について、SMART(Specific: 具体的、Measurable: 測定可能、Achievable: 達成可能、Realistic: 現実的、Timeframe:時間枠内で設定)な計画を作成する必要があります。

助成金提案書の成功事例を参考にする

成功した提案書(そして失敗したものも)を参考にすることで、他の人の失敗を繰り返さずに時間を節約することができます。次のようなところで入手できる過去の提案書を探してみましょう。

  • 大学の図書館
  • 信頼できる同僚
  • 上司やメンター
  • 過去または将来の資金提供団体
  • オンラインサイトやデータベース

例えばOpen Grantsのウェブサイトでは、成功したものも失敗したものも含め、250以上の助成金提案書を無料で読むことができます。自分の専門分野で成功した提案書のサンプルや、自分が申請する助成金を獲得した申請書を重点的に参考にしましょう。しかし、失敗も見過ごしてはいけません。それらを批判的に読み、どうすればもっとうまく書けるかを考えましょう。

助成金申請の機会を見定め、提案書を提出

自分に適した学校や科学分野を選んだり、研究を発表するためのジャーナルを選ぶのと同じように、将来の研究のために相応しい助成金を探しましょう。

a woman throwing money
助成金データベースの検索

助成金の機会を見つける最も簡単な方法は、データベースを利用することです。購読が必要なものもありますが、Google検索では何日もかかるものを数秒で探し出すことができます。これはまた、助成金の機会を整理し追跡するための、はるかに簡単な方法でもあります。

PivotやScientifyresearchResearchConnectは、世界中の助成金情報を提供する構造化された無料のデータベースです。これらのデータベースでは、インターフェイスの操作方法や、検索結果を絞り込むためのフィルター(科学分野、応募期限、割り当て予算など)の使い方も案内されています。

募集要項のチェック

適切な研究助成機関を見つけるには、応募できる助成金を調べるだけでは不十分です。批判的な視点が必要です。

どのような応募が求められているのかが不明瞭な場合、その助成金申請書を書くのは時間の無駄かもしれません。それを知っていれば、時間を節約することができます。

助成金の申請を決めたら、助成金のガイドラインを入念に読みましょう。指定されている構成(小見出しなど)、形式(フォントなど)、言語(使用する専門用語)に注意を払います。

説明を読みながら、提出に必要なものすべてをリストアップし、あなたの側の誰がこれらの情報を収集する責任を負うかを考えてください。

スポンサーの採点システムを理解する

助成金がどのように評価されるかを確認します。その評価基準に沿って、提案書を調整しましょう。例えば、英国のResearch and Innovationの採点表は、次の採点項目に基づいています。

  • 科学的特性とインパクト
  • 科学的リーダーシップ
  • リソースの妥当性
  • その他:倫理・ガバナンスの問題

期限には締め切りを守るという以外にも、重要な要素があります。もし締め切りが3週間後であれば、提案書の準備に時間をかける価値はないかもしれません。前述のように、数週間ではなく数か月単位で考える方が現実的です。そうすればストレスを溜めないばかりか、無駄な時間を省くことができます。

資金提供者のミッション(使命)を確認する

研究助成機関は、単にお金を出すためだけに存在するわけではありません。その機関や団体のミッションが何かよって、優先順位は変わってきます。その団体のミッションステートメントが自分のプロジェクトとよく合致しているかどうかを調べて、そのミッションに沿った提案をするようにしましょう。

例えば、Economic and Social Research Council(経済社会研究会議)の助成金の優先順位には、新型コロナウイルス感染症の大流行が社会における個人、グループ、組織に与える影響を理解することが加えられました。ですから、新型コロナウイルス感染症が新生児死亡率に与える影響を研究している医学研究者は、別の資金提供機関をターゲットにするほうががよいでしょう。

例えば、英国のNational Institute for Health and Care Research(国立健康研究所)は、医療と社会福祉の研究に重点を置いています。

プログラムマネージャーと親しくなる

助成金の要項を読んでも、自分のプロジェクトが助成対象になるかどうかわからない場合は、助成機関に直接問い合わせましょう。特に連絡を受けたくないという意思表示がない限り、人間的なつながりを作ることは一般的に良いことです。この点では、求職活動や人脈作りによく似ています。

助成金担当者(プログラムマネージャーやディレクターと呼ばれることもあります)が、あなたのような応募者をサポートします。何が対象で何が対象外かを明らかにするだけでなく、彼らとの関係を築くことで、あなたやあなたの仕事に対する彼らの信頼を築くことができます。

プログラムマネージャーの役割は、助成機関によって大きく異なることに注意してください。例えば、NIH(U.S. National Institutes of Health、アメリカ国立衛生研究所)は、若手研究者にプログラムマネージャーと連絡を取るよう勧めています。誰にどのように連絡を取るべきか、順を追って説明しています

しかし、小規模な財団の場合、助成金担当者は非常に忙しく、申請者からの連絡を快く思わないかもしれません。それを知るには、その都度スポンサーの文化を調べる必要があります。

研究支援室と親しくなる

助成金申請書の作成は、一人で行う必要はありません。あなたの大学には、おそらく研究支援室/研究支援部(または産学連携支援室)があるはずです。

そこにいる有能なスタッフたちから助成金申請手続きの事務的なサポートを受けることができます。関連書類の記入の手伝いや、申請書が助成機関のガイドラインに合致しているかどうかを再度チェックしてもらうことができるでしょう。

助成金提案書の本文の作成

助成金申請書の作成には、助成機関、担当者、プロセスのすべてが重要となります。しかし、助成金申請の最も重要な部分は、やはり提案書そのものです。

助成金を得るには、特に研究コミュニティへの貢献と社会的影響について、研究の重要性を強く主張することが必要です。

two people working on a math test
自分の研究が実社会の問題を解決することを証明する

多くの研究者は、自分の研究が実社会でどのような意味を持つかについて、あまり意識していません。しかし、ほとんどの研究助成機関は、社会の大きな課題を解決することが期待できる研究提案に資金を提供したいと考えています。

提案書を作成する前に、自分の研究が社会にどのような価値をもたらすのかを検討する必要があります。

それが人命を救ったり、金銭の節約につながったり、人々のウェルビーングを向上させるなど、目に見えるインパクトがあることを主張できるようにしたいものです。

連携できるプロジェクトパートナーを探す

適切な研究協力者を引き入れることで、成功の可能性を高めることもできます。

がんの研究であれば、病院の臨床医や特定の種類のがん撲滅を目指す団体と連携することができるでしょう。歴史の研究なら、博物館や文化財保護財団と組むこともできます。そうすることで、あなたの研究を実践に移す道が開ける可能性も高まります。

共同研究者を見つけるのに遠くまで行く必要はありません。まずは同僚や、自分が所属する機関や研究グループが持っている直接の人脈やつながりから探し始めましょう。

カンファレンスやセミナーで、同じ分野の研究者や企業の代表者とのネットワークを築くことも助成金の共同研究者を見つけるのには有益です。また、過去に助成金を受けた研究プロジェクトを調べて、共同研究者を探すこともできます。

同じ専門分野の仲間を引き入れる

学際的研究はそれぞれの分野の知見が他の分野に貢献するため、革新的と見なされます。これは異なる科学的専門分野や社会全体に影響を及ぼすことになります。

例えば、あなたが社会心理学者で、運転手のスピード違反のリスクに対する認識を研究しているとしましょう。輸送研究や工学などの関連分野の研究者はもちろん、コミュニティ組織や法執行機関にも参加してもらえば、あなたの提案をより説得力のあるものにすることができるでしょう。そして実際に提案はより強固なものになるはずです。

提案書にストーリーテリングを取り入れる

読んで評価する側にとっては助成金の提案書は、どれも同じように見えるものです。就職活動の応募書類と同じです。申請者としてのあなたは自分自身を他者より際立たせ、それを読む審査員の心を動かす必要があります。

そのためには、あなた自身とあなたの研究を、魅力的なストーリーで包んで売り込む必要があります。複雑な研究課題の作成にはあまり時間をかけず、自分の研究がどのように社会に役立つかを強調しましょう。効果的な解決策を提示することで、審査員はポジティブな感情を抱くようになります。ストーリーテリングのようなものです。

科学コミュニケーションの訓練を受ければ、その効果が上がるでしょう。また、Message Boxのような無料の科学的ストーリーテリングのツールを使うのもよいでしょう。この簡単なツールを使えば、自分の研究に関して頭の中にある情報を相手の共感を呼ぶ方法で伝えることができます。まずは実際のMessage Boxを読んでみることから始めましょう。

現実的な研究課題の設定

初めて応募する人にありがちなのが、たくさんの研究を約束することで提案書をより良く見せようとすることです。「このような大きな難題の数々を1つのプロジェクトで解決できる」と主張したくなるかもしれません。しかし現実的に考えれば、それは実現不可能なことが多いのです。

2~3年のプロジェクトなら研究課題は4つまでとしましょう。これらを提案した後でも、各課題について文献レビュー、研究計画、それぞれの研究課題で期待できる成果のリストを提供するのに十分な余力を確保することができます。

補足資料をまとめる

提案書そのものは核となる書類ですが、それは多くの補足資料をまとめることで出来上がるものです。

研究環境についての説明

研究助成機関は、あなたの専門知識に加えて、あなた(またはあなたの研究チーム)が提案したプロジェクトを成功させる能力を持っているかどうかも確認したいと考えます。

プロジェクトをやり遂げるために必要な研究設備を確保できるのか。これには大学図書館、研究所のリソースや装置、研究対象母集団へアクセス可能かなどが含まれるかもしれません。

提案する研究プロジェクトを(時間と予算の範囲内で)確実に開始して最後まで成し遂げるために必要なものがすべて揃っていることを提案書で証明する必要があります。ここにおいてはいくら説明してもし過ぎることはありません。

研究チームのバイオスケッチの作成

ほとんどの研究助成機関や団体は、研究チームメンバーの履歴書を簡略化した略歴 (バイオスケッチ) を要求します。バイオスケッチは、研究プロジェクトに関連するチームメンバーの専門知識や経験をアピールするものです。

NIH(アメリカ国立衛生研究所)やNational Science Foundation(アメリカ国立科学財団)などの機関では、定期的に更新される標準的なバイオスケッチの書式を使用しています。これらの機関は、バイオスケッチの作成とNIHの要件に従った書式設定を支援するツールも提供しています。

ここに転載することはできませんが、NIHのバイオスケッチのサンプルはこちらでご覧いただけます。

しかし、財団や企業のスポンサーも、履歴書/バイオスケッチに特定の要件を設定しています。それらに正確に従いましょう。

プロジェクトのタイムラインの作成

研究プロジェクトの時間枠をある程度詳しく説明しましょう。各段階をいつ開始し、いつ完了するのか。タイムラインを視覚的に表現することで、より理解しやすくなります。

研究提案が複雑で複数年にわたる場合、タイムライン図を作ると研究計画と実現可能性を明確にすることができます(下図参照)。

こちらは、タイムラインの大まかなイメージをつかむためのサンプルです。

sample timeline
付属書類をまとめる

必要な書類は、スポンサーの要求によって異なります。多くの場合、カバーレター、サポートレター、履歴書などが含まれます。

エグゼクティブサマリー(要旨)の作成

エグゼクティブサマリー(要旨)は、提案の最も重要な要素を凝縮してまとめたものです。長い提案の場合は、1ページまるまる使えるかもしれませんが、それ以外の場合は1段落にとどめるべきです。いずれにせよ、審査員に伝えるべきことは、次のとおりです。

  • プロジェクトの目標、対象となるニーズ、解決しようとしている現実的な問題は何か?
  • 予測されるプロジェクトの成果と広範囲な影響、またそれをどのように達成するのか?
  • どのようにしてプロジェクトの成功を判断するのか?
  • あなたは誰で、なぜこの資金を受けるに値するのか?

助成機関のミッションと資金提供の正当性を要旨に反映させましょう。要旨は提案書の最初の部分ですが、最後に書くのがベストです。同じ方法で原稿のアブストラクト(抄録)も原稿を書いた後に書くのがベストです。その時点で、プロジェクトの細かい部分やストーリーの全体像が見えてくるからです。あとは、それを簡潔にわかりやすく書くだけです。

助成金の予算を立てる

研究助成機関は、あなたがどのように助成金を使うのか正確に知りたいでしょう。研究プロジェクトが費用対効果に優れているか、プロジェクトの実施にかかる実際のコストを考慮しているかどうかを確認したいと考えるはずです。

研究助成機関は提案募集の際に、助成金の支給予定件数と各助成金の支給予算に関する情報を提供します。この情報は予算作成に役立つはずです。

助成金担当者と面談、経費について話し合う

前述の通り、ほとんどの研究機関には助成金を管理する担当者がおり、予算の作成や研究助成機関が要求する予算書式への記入をサポートしてくれます。助成金を獲得した場合には、おそらくその担当者が予算を管理することになるでしょう。

助成金予算を作成する際には、主に次の3点を考慮する必要があります。

  • 研究助成機関の方針と要件
  • 自分の所属機関の方針
  • プロジェクトの各課題に関連する費用

助成金申請書を作成する前にこれらのルールを知っておくと、時間の節約になります。助成金の管理部門では、これらを十分に説明した上であなたのプロジェクトの目標や目的に予算をつけるサポートをしてくれます。

カテゴリーの特定

予算は通常、表と図の形式で作成されます。それらは次の3つの要素で構成されています。

  • 直接費
  • 施設および管理費
  • 所属機関のコミットメント

最後の要素は研究プロジェクトの費用を研究助成機関と分担することについての自分の所属機関の同意を示すものです。

各構成要素は個別のカテゴリーに分けられます。

例えば、直接費とは特定の活動の実施に関連する費用や、プロジェクトの実施に必要な資金を指します。多くの場合、これらは次のような内容で構成されます。

  • 人件費:研究プロジェクトチームメンバーの給与
  • 外部コンサルタント:例えば、プロジェクトの費用対効果分析を行うために専門アドバイザーが必要な場合など
  • 設備:備品や実験装置
  • 旅費:交通費、宿泊費、生活維持費
予算の作成と根拠の説明

項目ごとの予算の算出に加えて、各費用の正当性を説明する必要があります。予算の各項目に簡単な説明を加えます。予算項目の表示順に従って記載しましょう。

予算の算出にあたっては、できる限り現実的な数字を出します。

予算案が助成金の上限を下回る場合は、もっと大きく見積もりましょう。より多くの母集団サンプルを選択する、より多くの実験を行うなど、研究計画がより良いものになるように考えてください。

見積もり予算が支給限度額を超えている場合は、提案が多すぎる可能性があります。研究課題を減らすか、スタッフの数を減らすなど考えてみてください。

以下は、12ヶ月の研究プロジェクト予算(大学とスポンサーがプロジェクト経費を分担する場合)の例です。

予算期間:2022年10月15日~2023年10月14日

a grant proposal chart
予算のタイムラインの作成

さて、ここまででプロジェクトの具体的な目的が設定されました。次に、主要な活動のタイムラインを作成し、各活動がいつ完了するのかを明示します。これは、健全な予算編成のための重要なポイントです。

例えば、2年間の研究を提案するとします。12か月間で80人の研究協力者を登録する予定です(毎月6人程度)。1人あたり1時間、協力者の自宅で聞き取り調査します。

1年目には、研究協力者の募集と聞き取り調査、そして協力者の自宅への移動のための予算が必要です。しかし2年目には、そのような活動は行われません。その代わりに、データ入力、分析、レポート作成などの予算が必要になるかもしれません。

細かいところまで掘り下げて、明確な説明を加えて、自分の計画を伝えましょう。

提案書の最終確認、見直し、推敲

審査員の視点に立って考えてみましょう(原稿を投稿する時にジャーナル編集者の視点で考えたり、就職活動の時に面接官の視点で考える必要があるのと同じです)。

審査員のあなたは疲れていて、お腹が空いているとします。短時間に数多くの応募書類を読まなければなりません。どうすれば、審査員にできるだけ負担をかけないようにできるでしょうか?

専門用語を避ける

どんなに革新的なアイデアでも、ずさんな文章やピントの定まらない文章では、せっかくのアイデアがぼやけてしまいます。

明確で簡潔、かつ分かりやすい言葉を使うべきです。1つのアイデアから次のアイデアへの流れが明快であること。「賢く聞こえる言葉」ではなく、「平易な言葉」を使いましょう。

次の2つの文章を比べてみてください。

悪い例I propose dissecting the wartime mnemonic practices of externally displaced Afghan populations.(私は、国外強制退去させられたアフガニスタン国民の戦時中の記憶的経験を分析することを提案します。)

良い例I would like to see how Afghan refugees remember and talk about the war in their country.(私はアフガン難民が自国の戦争についてどのように記憶し、語っているかを調べたいと思います。)

悪い例I aim to explore the heterogeneity of forest ecosystems in spatial and temporal recovery following numerous turbulences.(私は、数多くの激変後の空間的・時間的回復における森林生態系の不均質性を探求することを目指します。)

良い例I hope to see what occurs when a forest grows back after being logged, burned, and cultivated.(私は、伐採、焼失、開墾された森林が再び成長する際に何が起こるのかを調べたいと考えています。)

科学的な専門用語を避けて、より多くの人が理解できる言葉を使うことで、心のこもったストーリーを伝えることができます。このような考え方で原稿を書くことで、あなたの研究のインパクトが高まります。

読みやすい書式にする

専門用語を省くだけでなく、読みやすさを高めるために書式を工夫します。

空白、太字見出し、標準的なフォント、イラストなどはすべて提案書を読みやすくします。余白を広く取り、フォントサイズを9ポイント(またはそれ以下)にして文章を詰め込むと、細部が強調できるかもしれません。しかし、それは読みにくい文書になります。

番号付きのリストでアイデアを整理することができます。リストにすると目を通しやすく、簡潔な文章になります。リストには、「このプロジェクトの3つの主な目標は次のとおりです」や「この研究には4つの段階があります」 などの説明を前置きします。

文法的に正しく、読みやすい英文にする

スペルミス、文法の間違い、不自然な単語の選択、字数制限の超過などなど、こうしたミスは読み手にあなたの研究がどれだけ厳密であるかを疑わせることになります。また、あなたがお金をどれだけ慎重に扱えるかも疑われるかもしれません。

英語のミスは、英語力の不足と急ぎすぎの両方から生じることがあります。

専門家に編集や校正を依頼する、文法ツールを使うなどの一般的なアドバイスは別として、時間には余裕を持ちましょう。助成金の準備を締め切りの最終日や1週間前、あるいは1か月前になってから急いで行うようでは、ほぼ間違いなく言葉のミスが発生します。たとえ文章を書くのが得意な人でも、より明確に書き、専門用語やイディオムを省き、一貫性のあるプロフェッショナルな口調にする機会を逃す可能性があります。

提案書を明確に書き上げて「完璧」と思えるまで編集したら、1週間ほど寝かせておきましょう。急いでいるのは分かりますが、この時間はとても有効です。

その後、もう一度読み直して、また編集、校正、修正をします。これを2回行えばさらに良いでしょう。

多くのフィードバックを得る

ピアレビューは研究助成金の申請においては、なくてはならない手順です。

これまで述べてきたすべてのアドバイスに従ったとしても、研究提案書に不明確な部分があるかもしれません(少なくとも一部の人にとっては)。提案書をさらに完璧に近づけるために、他の人に読んでもらいましょう。自分の専門分野の同僚に限定してはいけません。彼らはおそらく研究の専門用語や手法に精通しているはずだからです。

次のような人たちに相談しましょう。

  • 教授
  • 助成金受給経験者
  • 申請しようとしている研究助成機関
  • 同じ専門分野の信頼できる仲間

これらの人々は、あなたのキャリアステージにおいて採択されやすい助成金提案書とはどういうものかを知る手助けとなってくれるはずです。

フィードバックは多ければ多いほど、また多様な人からのフィードバックが多いほど、良い結果が得られます。いつ誰があなたの提案書を見てくれるのかを早い段階で手配し、フィードバックを受けるたびに提案書を修正していきましょう。

助成金申請後の過ごし方

どんなに優れた申請書でも、助成金を受給できる保証はありません。実際、競争が激しいため、不採択となることもよくあることです(上記参照)。

有名な科学者でさえ、いつも成功するとは限りません。

先に引用したNature誌の記事によると、分子生物学者のCarol Greider博士は、2009年のノーベル生理学・医学賞を受賞したその日に、最近自分が提出した助成金申請が却下されたことを知ったといいます。翌日そのニュースを読んだその助成金の提供者はどんな気持ちだったでしょう!

ですから、たとえあなたの提案書が助成金を得られなかったとしても、研究計画の立案や執筆のプロセスは、控えめに言っても次の点において意義のあるものだといえます。

  • 新しいアイデアが生まれます。
  • 仲間と話したり、プロジェクトのパートナーを引き入れたりして、自分の視野を広げることができます。
  • もっと良い研究方法があるのではないか、自分にとって重要な別の研究課題があるのではないかと考えることもあるでしょう。

助成金申請は、特に経験の浅い研究者にとっては、時にイライラして疲れるものです。

過去の申請不採択や不評だったフィードバックから時間をかけて学んでいきましょう。そうすれば、次の助成金申請で成功する可能性が高まります。

まとめ

助成金提案書の作成でお困りですか?提案書においては、国や機関に関係なく同じ原則が多く適用されます。AJEの専門家がプロセスを指導し、あなたの英文を校正し、目指す助成金の獲得をお手伝いします。AJEのサービスについて詳しくお知りになりたい方はこちらをご覧ください

その他の参考資料

Ardehali, H. (2014). How to Write a Successful Grant Application and Research Paper. Circulation Research, 114(8), 1231–1234.

Brownson, R. C., Colditz, G. A., Dobbins, M., Emmons, K. M., Kerner, J. F., Padek, M., Proctor, E. K., & Stange, K. C. (2015). Concocting that Magic Elixir: Successful Grant Application Writing in Dissemination and Implementation Research. Clinical and Translational Science, 8(6), 710–716.

Chung, K. C., & Shauver, M. J. (2008). Fundamental Principles of Writing a Successful Grant Proposal. The Journal of Hand Surgery, 33(4), 566–572.

MacKellar, P. H. (2011). Writing Successful Technology Grant Proposals: A LITA Guide. New York: Neal-Schuman Publishers, Inc.

Pequegnat, W., Stover, E., & Boyce, C. A. (1995). How to Write a Successful Research Grant Application: A Guide for Social and Behavioral Scientists. New York: Plenum Press.

Porter, R. (2005). What Do Grant Reviewers Really Want, Anyway? (PDF)

Przeworski, A., & Salomon, F. (2012). Some Candid Suggestions on the Art of Writing Proposals. Revised for the Drugs, Security and Democracy Fellowship Program by SSRC staff (PDF)

Ries, J. B., & Leukefeld, C. (1994). Applying for Research Funding: Getting Started and Getting Funded (1st ed.). California, London: SAGE Publications, Inc.

Squitieri, L., & Chung, K. C. (2014). Funding Research in the Twenty-First Century. Hand Clinics, 30(3), 367–376.

Stanford Law School. (2021). Short Guide to Grant Writing for Researchers (PDF)

Wisdom, J. P, Riley, H, Myers, N. (2015). Recommendations for Writing Successful Grant Proposals, Academic Medicine: 90(12), 1720-1725.

著者
タグ
研究プロセスその他のアカデミックライティングの形式論文投稿の傾向研究を継続する
目次
SNSで共有
FacebookTwitterLinkedInCopy linkEmail
メルマガに登録
AJE Scholarの最新記事やお得なクーポンをいち早く入手するために、メルマガに登録しましょう

プライバシーポリシー