研究者は、研究の設計や実施、資金の申請、学会への参加、原稿の執筆、その他数多くの責任の中で、校正に十分な時間を割くことができない場合があります。この問題に対する迅速なアプローチの1つは、自動校正ツールを使用することです。これは通常、ウェブベースのサービスまたはダウンロード可能なプラグインで、スペル、文法、スタイルをチェックします。これらの校正サービスには、24 時間利用できること、結果がすぐに得られること、比較的安価であることが多いことなど、いくつかの利点があります。これらのサービスは、エラーや修正の可能性についての教育的な説明も提供する場合があります。しかし、こちらのレビューにあるように、これらのプログラムは特定の誤りや矛盾を見逃しており、不必要な変更を示唆していることが判明しています。これは、非母国語で執筆する著者にとって特に問題となる可能性があります。また、自動校正では、内容を理解していないため、論理のずれのほとんどを見逃してしまいます。しかし、人間による校正にも見落としや誤解が生じる可能性があると主張する人もいるでしょう。
人間の編集者と自動化ツールGrammarlyの比較
それにもかかわらず、特に学術研究に関連して、とはいえ、コンピュータ化された編集者よりも人間の編集者の方が望ましいと思われる、あまり研究されていない分野もあります。それは、分野固有の用語の使用を評価することです。この仮説を検証するために、臨床分野の用語集で詳しく説明されている、よく混同され、頻繁に誤用されるいくつかの用語に基づいて、正しい文章と誤った文章のリストを作成しました(以下のリストを参照)。念のため、非臨床的な文脈では正しくないように思われる可能性がある、正しく使用されている独特の用語"past history(既往歴)"を追加しました。その後、このテキストを一般的な校正サービスであるGrammarlyに提出しました。Grammarlyは「ライティング強化アプリ」と称され、文脈に基づいたスペル、文法、句読点、スタイル、単語の選択(語彙の使用)のチェックを行います。
結果は明らかでした。全体的に、自動校正ツールは正しい文章を不正確なものとしてマークすることはありませんでしたが(以下に詳述する1つの例外を除きます)、偽陰性、つまり不正確な文章の誤りを検出することはできませんでした。言い換えれば、校正プログラムは、正しい文も誤った文も、その大部分が正しいと判断したということです。特に"General"の設定では、臨床症例報告では一般的に許容される代名詞や受動態の使い方に疑問を呈し、"past history "は臨床論文では一般的な用語であるにもかかわらず(Google Scholarで約100万件のヒットがあります)、冗長であると指摘しました。同じ結果が"Academic"の設定でも得られました。最後に、"Technical"の設定では、代名詞や受動態の使用には敏感ではないものの、やはり"past history"という用語にフラグが立ちました。Microsoft Wordのスペル・チェックと文法チェックも同様で、受動態と"past history"の見かけの語感の悪さを指摘しましたが、誤った文のエラーは指摘しませんでした。
注目すべきは、Grammarlyのウェブサイトが「医学レポートの文法チェック」が可能であると述べているのに対し、最高経営責任者はGrammarlyは「プロのライターが次のレベルの言語習得を目指すためのものではない」と述べていることです。ここで紹介した小規模な調査によれば、Grammarlyのような自動校正サービスは、基本的な校正には使えるかもしれませんが、より専門的な文章を書くにはあまり適していない可能性があり、それこそが専門分野のエキスパートが優位な点です。
臨床用語やフレーズの正しい使用例と誤った使用例をGrammarlyに提出しましたが、自動校正ツールではよく混同される用語や頻繁に誤用される用語のエラーを特定できませんでした
よく混同される用語
正しい使用例
- A case of Parkinson's disease is presented. (パーキンソン病の一例を紹介する)
- A 325 mg dose of aspirin was administered every 4 hours.(325mgのアスピリンが4時間ごとに投与された)
- The survival period was 5 years.(生存期間は5年であった)
誤った使用例
- A case of Parkinson's disease visited our clinic.
- A 325 mg dosage of aspirin was administered every 4 hours.
- The survival period was 80%.
頻繁に誤用される用語
正しい使用例
- Emphysema was correlated with shortness of breath. (肺気腫は息切れと相関していた)
- The patient was diagnosed as having asthma. (患者は喘息と診断された)
- Bacterial infection is an indication for antibiotic use. (細菌感染は抗生物質使用の適応である)
- The patient was operated on in the hematology unit. (患者は血液内科で手術を受けた)
- Iron levels were a predictor of anemia. (鉄値は貧血の予測因子であった)
- Smoking is a risk factor for lung cancer. (喫煙は肺癌の危険因子である)
誤った使用例
- Emphysema was correlated to shortness of breath.
- The patient was diagnosed as asthma.
- Bacterial infection is an indication of antibiotic use.
- The patient was operated in the hematology unit.
- Iron levels were a predictor for anemia.
- Smoking is a risk factor of lung cancer.
特殊な用語
正しい使用例
- The patient had a past history of hypertension and a current history of heart disease. (この患者は高血圧の既往歴があり、心臓病の現病歴があった)