世界の研究者が伝授する論文掲載の秘訣

研究論文の発表にまつわる様々な課題を克服する秘訣を、研究者たちに伝授してもらいました。

最終更新日:2017年10月30日

researchers prepare proposal content for article submission

当社では以前、「研究発表メソッド」と題したコンテストを開催し、世界中の研究者に研究成果を公表する上での課題やそれを克服するための秘訣について尋ねました。

その結果、何百人もの研究者たちから素晴らしい回答をいただくことができました。

さて、当社としてはこの有益なアドバイスを独占するのではなく、研究者の皆様とシェアすることで研究成果を公表する過程で役立てていただきたいと思います。そこで、本記事ではとりわけ有意義なヒントをご紹介するとともに、回答をくださった方々に感謝の意を表したいと思います。

また、「研究発表メソッド」コンテストで見事優勝されたポルトガルのレイリア工科大学(Politécnico da Leiria)のPedro Morouço博士について、この場を借りて表彰させていただきます。かつてはスポーツ科学に携わっていた同博士ですが、現在ではバイオメカニクスおよびバイオエンジニアリングの分野で活躍されており、変形性関節症の治療を視野にバイオファブリケーションで最適構造を作り出す技術の開発に従事されています。博士の研究に興味をお持ちの方はこちらのウェブサイトをご覧ください。

研究者が伝授する論文掲載のための秘訣ベスト5

  1. 「あなたに率直な意見を述べることができる(できれば様々な専門分野の)同僚たちに、研究成果を見てもらう。」 ― レイリア工科大学(ポルトガル)の教授で「研究発表メソッド」コンテスト優勝者のPedro Morouço博士
これまでに目にした、論文発表にまつわる課題や障害を教えてください。

学術研究における最大の課題は、幅広い受け取り手に研究成果を伝えなくてはならないということでしょう。そのため、学術誌ではたいてい、分野の専門家だけでなく広範な読者層が理解できるような応用の利く内容が求められることになります。これは一見難しそうですが、多分野横断型アプローチの新たな可能性を開くためにも研究者なら誰もが念頭に置くべき大事なステップです。

よい結果につなげるため、どのように対処しましたか?

最初の草稿を執筆する段階でインフォグラフィックをいくつか作成するようにしています。これは論文原稿を明確かつ簡潔に保つ上で役立ちます。そして、最終原稿の段階では5段階のリッカート尺度(評点1「原稿の焦点や影響力が読者に伝わりにくい」~評点5「原稿の焦点や影響力が読者にとても伝わりやすい」)を用いて、3人の同僚に評価をお願いするようにしています。

このとき、異なる分野の専門家を選ぶのがコツです。たとえば、前回スポーツバイオメカニクスに関する論文原稿を執筆した際には、物理学・栄養学・エンジニアリングにそれぞれ携わっている同僚3人に評価を依頼しました。その結果、期待していたよりも焦点や影響力が伝わりにくい(評点1~3)という回答が得られたので、原稿の改善に向けてさらに詳細なコメントをお願いしました。

  1. 「よい原稿の基本は読者にカギとなる内容をきちんと理解してもらうこと。そこで、カギとなる内容を、はじめ(序章)・中(実験材料および方法)・終わり(結果)の順で『ストーリー』として展開し、内容に基づいた『教訓』(考察および結論)を添えるようにする。」  ― サンパウロ大学医学部(ブラジル)のMarcus Vinicius Nascimento Ferreira氏
これまでに目にした、研究発表にまつわる課題や障害を教えてください。

学術論文は毎日何本も公開されていますが、読者の大半はそのすべてに目を通す時間がありません。そこで、学術ジャーナルは論文原稿同士を競わせることで研究コミュニティにおける自社記事の受容度を高め、読者層を広げようとするわけです。実際、インパクトファクターの高いジャーナルに投稿される原稿のうち、掲載(あるいはアクセプト)されるものはたった5~10%に過ぎません。

では、学術論文の執筆者はどうしたらよいのでしょう?どうすれば自分の「ストーリー」をジャーナルに掲載してもらい、読者の目に触れる可能性を高めることができるのでしょうか?答えは簡単:簡潔かつ明瞭な内容に基づいた「ストーリー」を作ればよいのです。これは一見当たり前に思えるかもしれません。しかし、重要な発見を複数あつかうことが多い私たち(学術論文の執筆者)にとって、複雑な研究をたった1本の論文原稿にまとめなくてはならないというのはよくある悩みなのです。

よい結果につなげるため、どのように対処しましたか?

論文執筆の上達やジャーナル掲載の可能性アップに関して、研究者の方々にはいくつかアドバイスがあります。

ステップ1. 執筆に取り掛かる前に:①友人や家族、隣人に自分の研究について制限時間1分以内で説明してみましょう。研究の要点をクローズアップし、本筋から逸れないようにしなくてはなりません。②研究の要点を3~5つ書き出します。③研究成果を一文で要約しましょう。

ステップ2. 先ほどの作業で「ストーリー」の流れや要点となる内容が明瞭になったはずなので、いよいよ原稿執筆に取り掛かります。原稿を書き終えたら、次の2点について自問自答しながら少なくとも2度読み返しましょう:①原稿で述べられている情報は「ストーリー」を伝える上で本当に必要なのか?②その情報は研究の要点を伝える上で本当に必要なのか?この作業は序章や実験材料・方法、結論といった章ごとに注意深く行わなくてはなりません。そして、必要だと判断された情報だけを残し、そうでないものは削除するわけです。これによって「ストーリー」がより明確になり、文章も簡潔化されるはずです。

  1. 「きちんとした論文原稿を投稿先ジャーナルの主旨と突き合わせることで、リジェクトされる可能性を下げることができる。」 ― ケニア医療研究所・国際健康研究センター(ケニア)のBarbara Kabai Burmen博士
これまでに目にした、研究発表にまつわる課題や障害を教えてください。

研究発表の過程で私が直面した課題の一つはジャーナルの選択です。そもそも、実装研究に関する論文は分野横断的であり、生物科学と社会科学の狭間にこぼれ落ちてしまいがちなので投稿先ジャーナルを見つけるのは難しいことが多いのです。

これについて、論文投稿に苦労した実体験をもとにご説明しましょう。私たちの研究チームは当時、結果の質を上げることを目的とした様々な質保証プロセスの成果を実証するため、ルーティーン作業で得られる実験室データの分析に6ヶ月以上にわたって取り組んでいました。さらに、所属する研究所から成果発表の認可を取得するため、3ヶ月かけてクリアランス作業を行ったのです。

ところが、論文投稿の準備が整ったところで、投稿先探しに一苦労することになってしまいました。私たちはこの論文を学術ジャーナル5誌に対し、各誌の掲載基準に合うよう体裁を整えてから投稿しました。しかし、1つ目のジャーナルは外部査読の結果通知に6ヶ月以上かかった挙句、リジェクトされてしまいました。論文がジャーナルの主旨に合致していないというのです。

2つ目に選んだジャーナルのコメントは、より実験ベースの学術誌に投稿すべきだというものでした。3つ目は健康政策に重点を置くジャーナルでしたが、現時点では同誌のニーズを満たしていないという返答。そして、ヘルスケアの質に主眼を置く4つ目のジャーナルには、優先的に外部査読に回すほどの重要性がないとして編集部にリジェクトされてしまいました。

一方で、ジャーナルごとに異なる掲載基準に合わせて原稿を修正する手間を省くため、様々なジャーナルに対して非公式の問い合わせも繰り返し行いました。ところが、返信が来ないこともしばしばで、気落ちした私たちは次善の策として原稿をそのまま受理してくれたジャーナルに投稿することに決めました。ところが、ようやく掲載に漕ぎつけた後になって、その学術誌がハゲタカジャーナルらしいということを知らされたのです。せっかくプログラムが達成した素晴らしいパフォーマンスや苦労の末にようやく裏付けることができた研究成果を、業績から除外しなくてはならないかもしれないのは本当に残念なことです。

よい結果につなげるため、どのように対処しましたか?

論文原稿のテーマとジャーナルにとって優先度の高いテーマを合致させるため、私は学術誌選びの際にいくつか工夫することにしています。まず、論文の投稿先を選ぶ際に、ジャーナル選択サポート用のウェブサイトを利用することです。たとえば、ask.janeというウェブサイトを使って選んだ『Nursing Ethics』誌には査読の結果、一度目の修整のみで論文を掲載してもらうことができました。

また、経験豊富な研究者たちに原稿の投稿先についてアドバイスをもらうようにしました。その結果、2人の同僚からそれぞれ『AIDS Care』誌と『International Journal of Tuberculosis and Lung Diseases』誌を紹介してもらい、査読に基づく修正を経て2本の論文がそれぞれ掲載されることになりました。

同時に、論文で扱うテーマに関する研究に広く目を通すのを怠ってはいけません。私の場合、専門分野である生物医学について文献情報を何百万件も収録しているデータベース「Pubmed」を利用し『Human Resources for Health』誌に掲載された論文に目を通した結果、このジャーナルは私の論文を投稿するのに向いているという結論に達しました。

また、私はジャーナル選択に関するエコール・ポリテクニークの講座も受講しました。この講座では、学術ジャーナルの編集会議の様子やこれまでに掲載された論文の紹介が行われ、これを自分自身の原稿と比較しながら論文内での言及を検討する方法などが解説されています。

この講座ではまた、投稿先ジャーナルに掲載された論文の文献情報リストに目を通し、自分自身の論文に引用できないか検討するようアドバイスされました。私の場合、これを受けて論文原稿の投稿先として『Human Resources for Health』誌を的確に選ぶことができたわけです。

さらに、学術論文の執筆に関する様々な講座を受講したほか、研究フォーラムの際には必ず論文執筆に関するワークショップに参加するようにしています。こういったワークショップには毎回学ぶところがあるものです。

  1. 論文内で行われる主張の責任を負うのは原稿執筆者。責任感を持って質の高い論文を執筆・投稿しよう! ― マレーシア国民大学(マレーシア)のLim Seng Joe博士
これまでに目にした、研究発表にまつわる課題や障害を教えてください。

私はこれまでにインパクトファクターの高い有名ジャーナルから相当数の論文原稿の査読を任されてきました。その経験から言うと、原稿がリジェクトされてしまう主な理由には乏しい文章力や一貫性の欠如、辻褄の合わない段落や項目の羅列、不適切な言語運用などがあります。一貫性の欠如としては、同じ内容を指し示すために論文中で異なる用語が使われる例が見受けられます。たとえば、”raw(生データ)”と呼ばれているサンプルが別の段落では”crude(ローデータ)”と呼ばれるといったことです。これは読者の混乱を招きかねません。

また、一連の段落や項目の間に論理的な繋がりが見いだせないような文章も問題です。文章力の欠如のせいで著者が言わんとしていることを読者が理解できないということになれば、原稿の質は著しく損なわれてしまうでしょう。

良い結果につなげるため、どのように対処しましたか?

執筆者が複数いる場合には文章の一貫性を保つため、各自校正してからまとめるのではなく、出来上がった草稿を共著者全員で読み直しながら一緒に校正する必要があります。校正作業の中で共著者全員が意見を述べ、よりよいアプローチを探るわけです。これは時間や資源の節約につながります。とりわけ共著者が何人もいるケースなどでは、待ち時間を短縮できるほか各自が草稿をそれぞれ印刷して資源を無駄にする必要もなくなるためです。

  1. 複数の専門分野にまたがる学際研究を公表する作業は煩雑になりがち。これをうまく解決するには研究チームが一丸となって論文執筆の前後にブレインストーミングを行い、投稿先ジャーナルにおける当該研究のエッセンスを提示できるよう明瞭な行動計画を立てて、文書化すること。 ― マネジメント&サイエンス大学インターナショナル・メディカルスクール(マレーシア)のGeethanjali Bhas博士
これまでに目にした、研究発表にまつわる課題や障害を教えてください。

私にとって目下の課題は、複数の専門分野にまたがる学際研究の成果を公開することです。多分野横断型の研究論文は、医学やエンジニアリング・技術開発、生物学、さらには人文科学的な要素など多岐にわたる内容を含みます。その結果このような論文では、様々な分野に携わる複数の執筆者や査読者たちが研究手法や統計技術に関する様々なアプローチをとることになります。

このような論文を投稿する上で問題となる複合的な課題には、幅広い分野を対象とする適切なジャーナルを探すことや、投稿先ジャーナルのガイドラインに沿って研究プロジェクトを設計し、学際研究ならではの価値ある洞察を失うことなく語数制限の枠内で書き上げることなどが含まれるでしょう。

よい結果につなげるため、どのように対処しましたか?

まず、複数の専門分野にまたがる学際研究の成果を発表する上で最適なジャーナルを突き止めるため、プロジェクトの開始前・完了後に共著者とブレインストーミングを行うことから始めます。この際、行動計画をきちんと文書化することが大切です。また、この作業を行うには投稿検討中のジャーナルの主旨やこれまでに掲載された論文に目を通す必要があります。

また、プロジェクトチーム全体の幅広い視点を保つと同時に、各テーマの専門家が担当する分野にも一つずつ焦点を当てなくてはなりません。さらに、研究チーム全体で協力して行動計画を作成し、論文内で取り上げるべき重要な研究手法や成果、逆に除外すべき部分などを決定することになります。

ここで紹介した5人の研究者からのアドバイスが、皆様が論文執筆を進める時に少しでもお役立ていただければ幸いです。AJEでは、英文校正サービスのほか、図表のフォーマット調整学術翻訳など、包括的な執筆者支援のサービスを提供しています。AJEのサービスに関してご質問やご意見がございましたら、当社のサポートチームにご連絡ください。あなたの研究が順調に進展することを願っております。

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